石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(13)夏に鍛える

投稿日時:2018/08/08(水) 16:13rss

 立秋。暦の上では秋が始まる。
 今年の夏はことのほか暑い日が続き、どこから見ても秋という雰囲気ではない。わずかに蝉の鳴き声や空の色、そして早朝の爽やかな空気から、何となく季節が移っていることが感じられる程度である。
 しかし、ファイターズにとっては、これからが夏本番。7月下旬には前期試験が終わり、暑さに慣れるための軽い練習期間も終えて7月31日から本格的な夏の練習がスタートしている。
 8月10日からの夏合宿を前に、今年は学内のスポーツセンターを利用した短期合宿を2度繰り返した。日中の暑さを避け、早朝と夕方の涼しい時間を十分に使うための工夫である。基本的には朝の6時過ぎからあんパンとジュースの補食をすませて順次グラウンドに出る。7時から8時までが朝の全体練習。終われば学生会館で朝食を摂り、その後の90分は昼寝の時間。起床すると、今度は昼食。その後、冷房が完備した学内のトレーニングルームで1時間の筋力トレーニング。終わるとミーティングに入り、4時半ごろからは夕方の練習の準備。その後、グラウンドの気温が多少とも下がるのを待って夕方の全体練習。夕食後に再びミーティングというスケジュールである。
 こうした予定を円滑に進めるためには、朝夕の通学時間を削るしかない。そこで下宿生以外は学内の施設に泊まり込んで練習時間を捻出するのである。早朝からの練習で近隣の住宅に迷惑がかかっては大変ということで、練習中は笛も掛け声も禁止。合宿前には4年生の幹部が学校とも協力して周辺自治会の役員宅を訪問し、早朝からの練習に理解と協力を申し入れてもいる。外部の方にはうかがい知れないファイターズの気配りであり、合理的な練習である。
 こういう姿に接すると、今年もシーズンが近づいてきたと実感する。同時に4年生がこうして頑張る時間は、残すところ最大でも5カ月を切ったとも思い知らされる。「4年生の諸君。いまが勝負の時だ。頑張れ」と、思わず声を掛けたくなる。
 一方で、この季節は来春の入学を目指し、ファイターズの仲間に加わりたいと志望する高校生にとっても勝負の時だ。例年通り高校の学期末試験が終わるのを待って、スポーツ選抜入試で関西学院を目指す高校生の小論文勉強会を開いているが、彼らもまた夏の練習で忙しい中、週に1度の勉強会に心弾ませて参加している。
 今年、僕が担当しているのは12人。関西勢が中心だが、関東方面からの志願者が例年以上に多い。いつもの年なら、関東勢にはリクルート担当マネジャーの協力で彼らが書いた小論文をスマホでやりとりするのだが、今年はわざわざ夜行バスを利用したり、関西にいる親戚の家に泊めてもらったりして参加してくれる選手もいる。ファイターズの一員になり、ファイターズでフットボールを学びたいという強い動機があるからこその行動だろう。
 こういう高校生に接していると、僕もまたどうしてもこの子らの力になりたい、という強い気持ちが湧いてくる。大学の方針によって、来年の入学者からはとりわけ文武両道が求められる。それだけに、いま僕が協力しているささやかな勉強会が彼らの学習意欲を刺激し、それが入学後の高いモチベーションにつながってくれることを祈る気持ちがより強くなる。
 幸い、彼らが書いた文章を添削したり、簡単な会話を交わしたりする限り、みんな向上心のある高校生ばかりである。それぞれが所属するチームで鍛えられているのであろう。考え方もしっかりしている。プレーヤーとしての力だけでなく、将来は必ず部のリーダーとしての役割を果たしてくれると期待できる高校生も多い。
 暑さがどんなに厳しくても、仕事がどんなに忙しくても、時間が許す限りはグラウンドに出掛け、いそいそとこの勉強会に通う。そこで意欲に満ちた大学、高校生から新たなエネルギーを頂戴する。ファイターズに関わることができて良かったと思える瞬間である。
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