石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(4)ファイターズの道
今日、関西学院大学で開かれたファイターズの記者会見に出席。5月6日の日本大学との定期戦における「日大選手による反則行為」に関するファイターズの見解と主張をじっくりと聞かせていただいた。
すでに新聞やテレビの報道、それにネット上の多様な書き込みによって、問題の発端となった日大選手の反則行為についてはご承知の読者も多いとは思いますが、あえて私見を述べさせていただきます。フットボールを愛し、ファイターズのチーム作りに全幅の信頼を置いている老人の繰り言になるかもしれませんが、おつきあいいただければ幸いです。
まず、記者会見でファイターズから配布された資料の要旨を箇条書きで紹介します。
?当該の反則行為について、試合後にビデオ映像で確認したところ、関学のQBがボールを投げ終わって約2秒後に、相手DLが背後からタックルをしている?当の選手はボールには一切反応せず、QBだけをめがけて突進し、プレーが終わって力を抜いている状態の選手に全力で突き当たったうえ、倒れた選手の足をねじっている?これはプレーとはまったく関係なく、当該選手を傷付けることだけを目的とした意図的で極めて危険、かつ悪質な行為である?このDLはその2プレー後、及び4プレー後にもそれぞれパーソナルファールの反則を犯し、3回目の反則で資格没収となったが、試合後の日大監督のコメントは、これらの反則行為を容認するとも受け取れる内容だった?ファイターズは10日付けで日大アメリカンフットボール部の部長及び監督に対して厳重に抗議する文書を送った?その内容は・日大DLの関学QBへの1回目のパーソナルファールに対するチームとしての見解を求めると同時に、関学QB及び保護者へのチームからの正式な謝罪を求める・日大の監督が試合後にメディアに対して出したコメントに対する見解とコメントの撤回及び前項の行為が発生したことについての指導者としての正式な謝罪を求める……といった内容です。
これとは別にファイターズは、11日付けで関東学生連盟にも「連盟が規律委員会を設けて詳細を調査するとのことでありますが、その調査の過程で弊部へのヒアリングを強く要望します」という内容の要望書を提出したことも明らかにしています。
文章にすれば、長々とした説明になりますが、以上の件の大半は、ファイターズが記者会見で提供したビデオ映像を見れば一目で理解できます。
すでにSNSやネット上では、問題の場面が何度も再生されていますので、機会があれば見ていただきたいのですが、僕は今日の会見で記者のために繰り返し再生されたビデオを見て「これはアウト。ネットで『殺人タックル』という言葉が飛び交っている理由がよく分かる」と思いました。
同時に、この記者会見が開かれる何日か前に書いた僕のコラムは、一字一句修正する必要がないとも確信しました。
このコラムを書いているのは12日の夜ですが、実はこの週の半ばにこの問題に関して自分なりの考えをまとめ、デスクとして原稿をチェックしていただいている小野ディレクターに送信していました。しかし小野さんからは「この問題に関しては、チームとして見解をまとめ、対処しようとしているところです。土曜日に記者会見を開きますので、それまでは原稿を預からせて下さい」という話があり、僕もそれを了解して一端はボツにしていたのです。
記者会見も終わり、チームとしての見解が正式に公表されましたので、ボツにしていた原稿の一部を再生させていただきます。概要は以下の通りです。
……そもそも大学における課外活動とはどういう意味を持っているのでしょうか。大学、高校などでは通常、課外活動という言葉を使っていますが、もう一歩進めて、課外教育と捉えた方がより分かり易く、目的も明確になるのではないでしょうか。
多くの学生はいま、大学での学びと並行して部活動に熱中しています。オリンピックに出場するような選手もいれば、常に大学のトップを競うファイターズのようなチームもあります。一方で、部員が揃わずに苦労しているクラブもあります。一口に部活といっても、その内実は千差万別です。けれども、それぞれ状況は異なっても、一つの競技に打ち込み、自分を鍛え、高めようと取り組んでいる点においては、体育会に所属するすべての部員が共通の土俵に立っているといってもよいでしょう。
その共通の土俵とは何か。スポーツを通じて身体を鍛え、強い心を育むこと、仲間との友情を育み、生涯の友を得ること、ライバルに敬意を表し、互いに最高の状態で戦うことといってもいいのではないでしょうか。
そこからは、相手を傷つけてもよい、再起不能にしてもかまわない。どんな手段をつかってもよいから勝て、といったような発想が出てくるはずはありません。
その意味で、いま問題になっている日大の選手のプレーは、当該選手の問題だけでなく、指導者の問題、組織の問題と合わせて総合的に捉えなければ真実は見えてこないのではないでしょうか。
今回の問題で僕の脳裏に浮かんだのは、プリンストン大学の選手やコーチ、体育局の指導者のことでした。彼らは2015年春、ファイターズの招きで来日し、親善試合やシンポジウムを通じて爽やかな交流をしてくれました。試合では圧倒されましたが、彼らが見せてくれた課外教育やボランティア活動に取り組む姿、勉学と両立させながらの練習や試合への取り組みなどを思いおこすと、今回の事例との距離は天と地ほどの開きがあります。
今回のことは、思い返すだけでも腹立たしいことです。けれども日本の大学の課外活動の現実と限界を見せつけてくれたという意味では、一つのエポックになるはずです。
それを信じて、学生たちの心身の成長、発達を促すための組織づくりに突き進んでいきましょう。関西学院の課外教育のよきモデルとしての道を歩みましょう。大学当局にも、大学スポーツ界にも、必ず目の見える人はいるはずです。もちろんファンの目も確かでしょう。
いまは「一粒の麦」かもしれませんが、今日の記者会見で蒔かれたこの麦が日本の学生スポーツ界の現状に風穴を開けることを信じて疑いません。合い言葉は「どんな人間になんねん」(by鳥内監督)です。
すでに新聞やテレビの報道、それにネット上の多様な書き込みによって、問題の発端となった日大選手の反則行為についてはご承知の読者も多いとは思いますが、あえて私見を述べさせていただきます。フットボールを愛し、ファイターズのチーム作りに全幅の信頼を置いている老人の繰り言になるかもしれませんが、おつきあいいただければ幸いです。
まず、記者会見でファイターズから配布された資料の要旨を箇条書きで紹介します。
?当該の反則行為について、試合後にビデオ映像で確認したところ、関学のQBがボールを投げ終わって約2秒後に、相手DLが背後からタックルをしている?当の選手はボールには一切反応せず、QBだけをめがけて突進し、プレーが終わって力を抜いている状態の選手に全力で突き当たったうえ、倒れた選手の足をねじっている?これはプレーとはまったく関係なく、当該選手を傷付けることだけを目的とした意図的で極めて危険、かつ悪質な行為である?このDLはその2プレー後、及び4プレー後にもそれぞれパーソナルファールの反則を犯し、3回目の反則で資格没収となったが、試合後の日大監督のコメントは、これらの反則行為を容認するとも受け取れる内容だった?ファイターズは10日付けで日大アメリカンフットボール部の部長及び監督に対して厳重に抗議する文書を送った?その内容は・日大DLの関学QBへの1回目のパーソナルファールに対するチームとしての見解を求めると同時に、関学QB及び保護者へのチームからの正式な謝罪を求める・日大の監督が試合後にメディアに対して出したコメントに対する見解とコメントの撤回及び前項の行為が発生したことについての指導者としての正式な謝罪を求める……といった内容です。
これとは別にファイターズは、11日付けで関東学生連盟にも「連盟が規律委員会を設けて詳細を調査するとのことでありますが、その調査の過程で弊部へのヒアリングを強く要望します」という内容の要望書を提出したことも明らかにしています。
文章にすれば、長々とした説明になりますが、以上の件の大半は、ファイターズが記者会見で提供したビデオ映像を見れば一目で理解できます。
すでにSNSやネット上では、問題の場面が何度も再生されていますので、機会があれば見ていただきたいのですが、僕は今日の会見で記者のために繰り返し再生されたビデオを見て「これはアウト。ネットで『殺人タックル』という言葉が飛び交っている理由がよく分かる」と思いました。
同時に、この記者会見が開かれる何日か前に書いた僕のコラムは、一字一句修正する必要がないとも確信しました。
このコラムを書いているのは12日の夜ですが、実はこの週の半ばにこの問題に関して自分なりの考えをまとめ、デスクとして原稿をチェックしていただいている小野ディレクターに送信していました。しかし小野さんからは「この問題に関しては、チームとして見解をまとめ、対処しようとしているところです。土曜日に記者会見を開きますので、それまでは原稿を預からせて下さい」という話があり、僕もそれを了解して一端はボツにしていたのです。
記者会見も終わり、チームとしての見解が正式に公表されましたので、ボツにしていた原稿の一部を再生させていただきます。概要は以下の通りです。
……そもそも大学における課外活動とはどういう意味を持っているのでしょうか。大学、高校などでは通常、課外活動という言葉を使っていますが、もう一歩進めて、課外教育と捉えた方がより分かり易く、目的も明確になるのではないでしょうか。
多くの学生はいま、大学での学びと並行して部活動に熱中しています。オリンピックに出場するような選手もいれば、常に大学のトップを競うファイターズのようなチームもあります。一方で、部員が揃わずに苦労しているクラブもあります。一口に部活といっても、その内実は千差万別です。けれども、それぞれ状況は異なっても、一つの競技に打ち込み、自分を鍛え、高めようと取り組んでいる点においては、体育会に所属するすべての部員が共通の土俵に立っているといってもよいでしょう。
その共通の土俵とは何か。スポーツを通じて身体を鍛え、強い心を育むこと、仲間との友情を育み、生涯の友を得ること、ライバルに敬意を表し、互いに最高の状態で戦うことといってもいいのではないでしょうか。
そこからは、相手を傷つけてもよい、再起不能にしてもかまわない。どんな手段をつかってもよいから勝て、といったような発想が出てくるはずはありません。
その意味で、いま問題になっている日大の選手のプレーは、当該選手の問題だけでなく、指導者の問題、組織の問題と合わせて総合的に捉えなければ真実は見えてこないのではないでしょうか。
今回の問題で僕の脳裏に浮かんだのは、プリンストン大学の選手やコーチ、体育局の指導者のことでした。彼らは2015年春、ファイターズの招きで来日し、親善試合やシンポジウムを通じて爽やかな交流をしてくれました。試合では圧倒されましたが、彼らが見せてくれた課外教育やボランティア活動に取り組む姿、勉学と両立させながらの練習や試合への取り組みなどを思いおこすと、今回の事例との距離は天と地ほどの開きがあります。
今回のことは、思い返すだけでも腹立たしいことです。けれども日本の大学の課外活動の現実と限界を見せつけてくれたという意味では、一つのエポックになるはずです。
それを信じて、学生たちの心身の成長、発達を促すための組織づくりに突き進んでいきましょう。関西学院の課外教育のよきモデルとしての道を歩みましょう。大学当局にも、大学スポーツ界にも、必ず目の見える人はいるはずです。もちろんファンの目も確かでしょう。
いまは「一粒の麦」かもしれませんが、今日の記者会見で蒔かれたこの麦が日本の学生スポーツ界の現状に風穴を開けることを信じて疑いません。合い言葉は「どんな人間になんねん」(by鳥内監督)です。
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