石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(1)新しい年に

投稿日時:2018/04/07(土) 09:41rss

 4月。桜が咲き、満開になって、散っていく。例年になく長い冬が続き、3月からは一転して暖かくなった今季は、開花も早く、散るまでの期間も短かった。その分、咲きそろった花は、例年にも増して美しかった。
 「学園花通り」から正門に続く花の道に新入生を迎え、ファイターズの2018年がスタートした。
 実際は、昨年暮れ、甲子園ボウルで敗れた日から、チームは再スタートを切っている。新4年生を中心に新しいシーズンを迎える体制を整え、方針を決め、期末の試験が終わるのを待ちかねて体力の養成にも取り組んだ。人里離れた「虎の穴」千刈キャンプ場での鍛錬、3次にわたるスポーツセンターでのトレーニング合宿。昨年はまだまだひ弱かった1、2年生の体がでかくなり、筋肉が盛り上がっているのを見れば、そのトレーニングの厳しさがうかがえる。
 それでも4月。新しい学年が始まる季節には特別の感慨がある。昨日、久々に練習を見る機会があったが、昨年とはまた違った雰囲気があった。グラウンドを支配し、チームを仕切っていた4年生の姿はないし、練習開始にあたって「ハドル!」と大きな声を上げるのも昨年の主将、井若君ではなく、新しく主将に就任した光藤君である。パートのリーダーも変わり、昨年まで、どちらかといえば4年生に遠慮していたようなメンバーが生き生きとリーダシップを発揮している。
 新しい3年生の顔つきも変わった。昨年まではチームに「ついていく」ことで精一杯に見えた面々が、いまは自信たっぷりな表情で練習に取り組んでいる。各ポジションとも、この学年と新2年生が4年生を突き上げるような形になれば、卒業生が抜けた穴も埋まるのではないかと期待が持てる。
 今春、入部したばかりの1年生の姿も見えた。僕は昨年夏、スポーツ選抜入試に挑むメンバーを対象にした勉強会で顔を合わせた面々しか知らないが、それでも、半年ぶりで顔を合わせると、懐かしい気持ちになる。ちょうどフレッシュマンの練習が終わった時間で、グラウンドを引き上げる何人かのメンバーと顔を合わせ、立ち話をしただけだが、それでもやる気満々の1年生を見ると、うれしくなる。「希望のポジションは?」と問い掛け「ラインバッカーです」「レシーバーです」と答えが返って来るたびに「がんばれよ。期待してるで」と声を掛ける。
 これからは先ず体力づくり。練習に耐えられる体作りに取り組み、基準の数値をク
リアした選手から順次、練習メンバーに組み込まれていくことになる。いまは「チー
ムに溶け込んでくれ」「毎日、喜び勇んでグラウンドに顔を出してくれ」と願うばか
り。まるで孫の成長を楽しみにしているおじいさんの心境である。
 新しいスタートに合わせて、今季はコーチ陣に新しく香山裕俊コーチが加わる。2012年の卒業で、松岡主将と同期のDBである。関西リーグの優勝をかけた最終戦、立命との試合で、相手のエースQBに渾身のタックルを見舞って試合の主導権をもぎ取り、そのままライスボウルまで突っ切った主役の一人といえば、思い出されるファンも多いのではないか。卒業後はチームのアシスタントコーチを務め、社会人のエレコム神戸でも主将として活躍していた現役プレーヤーでもある。
 今季からプロコーチとして就任。守備コーディネーターを担うという。先日、食事をともにしながら、じっくり話し込んだが、安定した仕事をなげうってファイターズに戻ろうと決意するまでには、結構、葛藤もあったそうだ。それでも、あえてプロコーチの道を選んでくれたことに、学生時代から彼を知っている人間の一人として大いに歓迎したい。
 アシスタントコーチとプロのコーチでは求められる役割も能力も異なる。けれども、大学でも社会人でも、チームを背負う主力選手として活躍してきた経験は必ず役に立つ。昨季まで社会人チームのプレーヤーを務め、他大学出身の選手と同じ釜の飯を食ってきたことも、役立つはずだ。大いにコーチの「技術と哲学」を勉強し、チームに還元してもらえることを期待している。
      ◇      ◇
 新しいシーズンに向けてこのコラムを再開します。昨季の悔しさを胸に秘めた「チーム光藤」のメンバーが今季、どのように努力し、チームを飛躍させるか。折々に伝えて行きます。ご期待下さい。
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