石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(28)「一番勝ちたい相手に勝て。」
立命戦まであと5日。ファイターズのホームページには、その試合を告知するニュースが日々更新されている。14日は練習前にファイターズの記者会見があり、練習も一部公開された。それを伝える新聞各紙の記事などにざっと目を通しつつ、このコラムを書き始めている。
記者会見での監督や選手の発言は、関学スポーツに詳しい。選手一人一人の発言も興味深いが、とりわけ鳥内監督の言葉が真に迫っている。詳しくは関学スポーツのホームページをみてもらうとして、僕には冒頭の「現状はガタガタ。スカウトメンバーが頑張って、それにやられている状況」という言葉に注目した。
長年、ファイターズを指導されてきた監督の目は厳しい。常に「目の前の相手に、それで勝てるのか」という物差しで物事を判断される。自分では「今日はよくできた」と思ったり、仲間から「なかなかええやん」と言ってもらえたりしても、それはチーム内での物差し。相手チームのメンバーを一人一人思い浮かべ、グラウンドに立つ一人一人のメンバー全員が、誰一人欠けることなく相手に勝てるのか、本当に勝つための練習ができているのか、という物差しで計れば「現状はガタガタ」と見えるのだろう。
週末ごとに練習を見せてもらっている僕の目から見ても、時には監督の懸念されるような状況が見えてくる。例えば、授業を終えてグラウンドに向かう選手の足取りや表情。毎年、決戦を控えたこの時期になると、1分でも早くグラウンドへ、と坂道を駆け上がって来る選手が増えるが、今年はどうか。そういう物差しで見ると、僕の胸中には、ときに弱気の虫が顔を出すのである。
もちろん、チームのど真ん中にいて活動している選手、スタッフの気持ち、立ち位置は明確である。それはチームの練習が始まるはるか前から自発的に取り組んでいるメンバーの表情からもうかがえるし、それを支えるトレーナー、マネジャー、分析スタッフの行動からも見て取れる。なかでも、いま学生会館などに張り出されている立命戦の告知ポスターのコピーが心強い。
「一番勝ちたい相手に勝て。」
この一言である。武士に二言はない。一番勝ちたい相手に勝つしかないのである。
聞けば、このコピーは2年生マネジャーの橋本典子さん(1年生の時から同期のマネジャー三浦麻美さん、安在海人君とともにチームを支えている「ナイス3人組」の一人である)が考え出し、それに周囲が賛同して採用されたそうだ。
「一番勝ちたい相手に勝て」。この言葉に奮い立たなければ男ではない。チームを最優先にして活動している人間なら、全員がこの言葉、この気持ちを共有できるはずだ。この気持ちが共有できるなら、必死懸命に練習に取り組み、試合で最善を尽くすしかない。
もう20年以上前のことになるが、京大が恐ろしいほど強かった時代に、朝日新聞の記者として水野弥一監督を取材したことがある。そのときの言葉の断片がいまも記憶に残っている。
「全力を尽くします、というだけなら誰でもできる。僕は一升の水しか入らない瓶に1升2合の水を入れろ。それができてこそ全力を尽くしたことになる。僕は選手に、いつもそう求めています」
細かいニュアンスは忘れたが、要旨はそういうことだった。
「一番勝ちたい相手に勝て」。2年生のマネジャーが考え出した試合告知ポスターのコピーにも、それに通じる迫力がある。
この言葉を裏切ってはならない。水野さんの言葉を借りるなら、1升瓶に1升2合の水を入れるべく必死にもがきつづけるしかないのである。
ファイターズとは、そういう強い意志を持って戦う人間の集団である。そのことを全員が胸に刻み、決戦に挑んでもらいたい。健闘を祈る。
記者会見での監督や選手の発言は、関学スポーツに詳しい。選手一人一人の発言も興味深いが、とりわけ鳥内監督の言葉が真に迫っている。詳しくは関学スポーツのホームページをみてもらうとして、僕には冒頭の「現状はガタガタ。スカウトメンバーが頑張って、それにやられている状況」という言葉に注目した。
長年、ファイターズを指導されてきた監督の目は厳しい。常に「目の前の相手に、それで勝てるのか」という物差しで物事を判断される。自分では「今日はよくできた」と思ったり、仲間から「なかなかええやん」と言ってもらえたりしても、それはチーム内での物差し。相手チームのメンバーを一人一人思い浮かべ、グラウンドに立つ一人一人のメンバー全員が、誰一人欠けることなく相手に勝てるのか、本当に勝つための練習ができているのか、という物差しで計れば「現状はガタガタ」と見えるのだろう。
週末ごとに練習を見せてもらっている僕の目から見ても、時には監督の懸念されるような状況が見えてくる。例えば、授業を終えてグラウンドに向かう選手の足取りや表情。毎年、決戦を控えたこの時期になると、1分でも早くグラウンドへ、と坂道を駆け上がって来る選手が増えるが、今年はどうか。そういう物差しで見ると、僕の胸中には、ときに弱気の虫が顔を出すのである。
もちろん、チームのど真ん中にいて活動している選手、スタッフの気持ち、立ち位置は明確である。それはチームの練習が始まるはるか前から自発的に取り組んでいるメンバーの表情からもうかがえるし、それを支えるトレーナー、マネジャー、分析スタッフの行動からも見て取れる。なかでも、いま学生会館などに張り出されている立命戦の告知ポスターのコピーが心強い。
「一番勝ちたい相手に勝て。」
この一言である。武士に二言はない。一番勝ちたい相手に勝つしかないのである。
聞けば、このコピーは2年生マネジャーの橋本典子さん(1年生の時から同期のマネジャー三浦麻美さん、安在海人君とともにチームを支えている「ナイス3人組」の一人である)が考え出し、それに周囲が賛同して採用されたそうだ。
「一番勝ちたい相手に勝て」。この言葉に奮い立たなければ男ではない。チームを最優先にして活動している人間なら、全員がこの言葉、この気持ちを共有できるはずだ。この気持ちが共有できるなら、必死懸命に練習に取り組み、試合で最善を尽くすしかない。
もう20年以上前のことになるが、京大が恐ろしいほど強かった時代に、朝日新聞の記者として水野弥一監督を取材したことがある。そのときの言葉の断片がいまも記憶に残っている。
「全力を尽くします、というだけなら誰でもできる。僕は一升の水しか入らない瓶に1升2合の水を入れろ。それができてこそ全力を尽くしたことになる。僕は選手に、いつもそう求めています」
細かいニュアンスは忘れたが、要旨はそういうことだった。
「一番勝ちたい相手に勝て」。2年生のマネジャーが考え出した試合告知ポスターのコピーにも、それに通じる迫力がある。
この言葉を裏切ってはならない。水野さんの言葉を借りるなら、1升瓶に1升2合の水を入れるべく必死にもがきつづけるしかないのである。
ファイターズとは、そういう強い意志を持って戦う人間の集団である。そのことを全員が胸に刻み、決戦に挑んでもらいたい。健闘を祈る。
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記事タイトル:(28)「一番勝ちたい相手に勝て。」
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