石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(22)試合後の一言半句
神戸の王子スタジアムには、独特の風情がある。阪急・王子公園駅のすぐ前、阪神間で生まれた子どもたちが「七五三参り」より前に訪れる王子動物園のすぐ隣という立地が、まずファイターズの本拠地という実感を与えてくれる。客席の規模が小さく、すぐに座る場所がなくなってしまうのは難点だが、こんもり茂った木立が適度な日陰をつくり、夜ともなれば、王子動物園の観覧車の電飾がちらちらと輝いて、見る者を幻想の世界に連れて行ってくれる。
観客席とグラウンドが近いから、選手の素顔がよく見える。試合終了後は、グラウンドのあちこちで選手やコーチが話し込む場面も身近に見られる。観客席とグラウンドが厳然と仕切られている大規模なグラウンドでは到底味わえない魅力である。
4日の近大戦終了後、そんなグラウンドに降りて、選手やコーチたちと「一言半句」のやりとりをした。その言葉を固有名詞をつけて掲載することは、なにかと差し障りがあるので控えるが、選手もコーチもそれぞれ現状に危機感を持ち、それを打開するためにいろいろと考えていることがよく分かった。
スコアは51-0。数字だけを見れば、不満はない。けれども、選手たちは試合を通じて突きつけられた課題に、浮かれた所はまったくなかった。
「体の切れが悪い、調整の仕方に問題があるのでは」とトレーニング担当コーチに真剣な表情で相談する下級生。せっかく出番をもらったのに、自らの不本意なプレーに悔し涙を流す控え選手。「オフェンスの練習のやり方を再検討しなければならない」と唇をかむ幹部……。
コーチ陣も「大量得点といっても、後半、試合が決まってからですから。前半、なかなかタッチダウン(TD)に持ち込めなかった点をしっかり見極めなくては」とか「パスプロが好くなったように見えたけど、それは相手守備が対応してこなかったから。現状のままでは立命のデフェンスには通用しません」と、異口同音に辛口の採点だった。
こういう話を聞くと、つくづく「社会人を破って日本1」という目標に到達するまでの道のりは長いと実感する。
試合は、立ち上がりから守備陣が奮起し、ファイターズのペース。QB加納のパスにRB稲毛、RB河原、RB石田のランを織り交ぜて着実に陣地を進める。
けれども、敵のゴールは遠い。なかなかTDまで持ち込めず、2回連続でフィールドゴール(FG)に追い込まれてしまう。幸い2度ともK大西が冷静に41ヤードと38ヤードのFGを決め、主導権は手離さなかったが、オフェンスの不安材料が目につく。
ようやく2Q7分33秒、加納からWR柴田への31ヤードTDパスが決まる。長身の柴田が、素早い身のこなしで相手DBを振り切り、一気にゴール中央に駆け込んだ。昨年から試合に出場。エースレシーバーの秋山や榊原らに見劣りしないパスキャッチを見せてきた選手ならではの好プレーだった。
後半は、ファイターズのレシーブでプレー再開。相手キックを確保した河原が一気に67ヤードをリターンする。相手陣28ヤードから始まった好機に、稲毛が左オープンを走り切ってTD。後半開始19秒。一気に流れがファイターズに傾く。
その後、QBは幸田に交代。WR春日への長いパスを立て続けにヒットしてつかんだ好機をTE垣内への19ヤードTDパスに結びつける。これで、すっかり落ち着いた攻撃陣はRB稲村、RB久司のTDを立て続けに決める。最後は残り2ヤード、残り時間2秒というシチュエーションでRB石田が走り込み、終わってみれば51-0。
後半途中からは、攻守とも控えのメンバーを次々に起用し、実戦練習を積ませた。僕がとくに注目している1年生も、DL長島、畑田、佐藤、DB香山、OL谷山らが次々に起用され、それぞれが期待通りの動きを見せてくれた。
けれども、これで満足しているのは、観客席だけ。試合後の選手やコーチの受け止め方は、冒頭に紹介した「1言半句」の通りである。目先の得点差に一喜一憂せず、自分たちの目標から逆算して現状を分析し、それに対策を立てようとする選手やコーチ。彼らが本気で対策に取り組む限り、ファイターズはまだまだ成長するはずだ。
それが確認できたことがこの日の収穫。ファイターズのこれからに期待を膨らませて、照明の消えた王子スタジアムを後にした。
観客席とグラウンドが近いから、選手の素顔がよく見える。試合終了後は、グラウンドのあちこちで選手やコーチが話し込む場面も身近に見られる。観客席とグラウンドが厳然と仕切られている大規模なグラウンドでは到底味わえない魅力である。
4日の近大戦終了後、そんなグラウンドに降りて、選手やコーチたちと「一言半句」のやりとりをした。その言葉を固有名詞をつけて掲載することは、なにかと差し障りがあるので控えるが、選手もコーチもそれぞれ現状に危機感を持ち、それを打開するためにいろいろと考えていることがよく分かった。
スコアは51-0。数字だけを見れば、不満はない。けれども、選手たちは試合を通じて突きつけられた課題に、浮かれた所はまったくなかった。
「体の切れが悪い、調整の仕方に問題があるのでは」とトレーニング担当コーチに真剣な表情で相談する下級生。せっかく出番をもらったのに、自らの不本意なプレーに悔し涙を流す控え選手。「オフェンスの練習のやり方を再検討しなければならない」と唇をかむ幹部……。
コーチ陣も「大量得点といっても、後半、試合が決まってからですから。前半、なかなかタッチダウン(TD)に持ち込めなかった点をしっかり見極めなくては」とか「パスプロが好くなったように見えたけど、それは相手守備が対応してこなかったから。現状のままでは立命のデフェンスには通用しません」と、異口同音に辛口の採点だった。
こういう話を聞くと、つくづく「社会人を破って日本1」という目標に到達するまでの道のりは長いと実感する。
試合は、立ち上がりから守備陣が奮起し、ファイターズのペース。QB加納のパスにRB稲毛、RB河原、RB石田のランを織り交ぜて着実に陣地を進める。
けれども、敵のゴールは遠い。なかなかTDまで持ち込めず、2回連続でフィールドゴール(FG)に追い込まれてしまう。幸い2度ともK大西が冷静に41ヤードと38ヤードのFGを決め、主導権は手離さなかったが、オフェンスの不安材料が目につく。
ようやく2Q7分33秒、加納からWR柴田への31ヤードTDパスが決まる。長身の柴田が、素早い身のこなしで相手DBを振り切り、一気にゴール中央に駆け込んだ。昨年から試合に出場。エースレシーバーの秋山や榊原らに見劣りしないパスキャッチを見せてきた選手ならではの好プレーだった。
後半は、ファイターズのレシーブでプレー再開。相手キックを確保した河原が一気に67ヤードをリターンする。相手陣28ヤードから始まった好機に、稲毛が左オープンを走り切ってTD。後半開始19秒。一気に流れがファイターズに傾く。
その後、QBは幸田に交代。WR春日への長いパスを立て続けにヒットしてつかんだ好機をTE垣内への19ヤードTDパスに結びつける。これで、すっかり落ち着いた攻撃陣はRB稲村、RB久司のTDを立て続けに決める。最後は残り2ヤード、残り時間2秒というシチュエーションでRB石田が走り込み、終わってみれば51-0。
後半途中からは、攻守とも控えのメンバーを次々に起用し、実戦練習を積ませた。僕がとくに注目している1年生も、DL長島、畑田、佐藤、DB香山、OL谷山らが次々に起用され、それぞれが期待通りの動きを見せてくれた。
けれども、これで満足しているのは、観客席だけ。試合後の選手やコーチの受け止め方は、冒頭に紹介した「1言半句」の通りである。目先の得点差に一喜一憂せず、自分たちの目標から逆算して現状を分析し、それに対策を立てようとする選手やコーチ。彼らが本気で対策に取り組む限り、ファイターズはまだまだ成長するはずだ。
それが確認できたことがこの日の収穫。ファイターズのこれからに期待を膨らませて、照明の消えた王子スタジアムを後にした。
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