石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(9)「完敗」と「最高」
日曜日の「神戸ボウル」、パナソニックとの試合は24-10。スコアだけでなく内容的にも完敗だった。当日、会場で応援していたファイターズファンに聞けば、10人が10人ともそのように答えられるだろう。
関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
1、随所に素晴らしいプレーがあった。
例えば、0-0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
関学スポーツが伝えてくれる「試合後のコメント」を見ても、鳥内監督は「レベルに差があった。ライスボウルで勝負しょうと思うんやったら今のままではあかん」と発言されている。
実際に戦った選手の言葉はさらに厳しい。井若主将は「よい点も悪い点もあったが、全体的にめちゃくちゃ悪い。1対1でも負けている。レベルが低いと感じた」、松本副将は「実力の足りなさを痛感した」、QBの光藤君は「相手のスピードについて行けない。想定以上の速さに対応できなかった」といっている。それぞれが本音であろう。
けれども、僕はへそ曲がりである。試合は完敗だったと認めることはやぶさかではないが、それでもあえて「最高の試合だった」と主張したい。賛同は得られないだろうし、そんな甘ったれたことを言っているからダメなんだ、と叱られるかもしれない。けれども、たとえ負けゲームであったとしても、そこに光明を見つけるのが僕の役割だと思っているから、あえて自説を書かせていただく。ただの強がりといわれるかもしれないが、お読みいただければ幸いである。
1、随所に素晴らしいプレーがあった。
例えば、0-0で迎えた1Qの終盤、自陣21ヤード付近からの攻撃である。まずは光藤がWR松井に20ヤードのパスをヒット、次はRB山口が見事なカットで相手DBを抜き去り、25ヤード前進。次は光藤がランニングバックにボールを渡すと見せかけながら、そのままボールをキープして16ヤード前進。わずか3プレーで相手ゴール前20ヤードまで迫った。
残念ながら、この場面は最後の詰めが甘くFGの3点にとどまったが、社会人選抜といってよいほどの強力なメンバーを揃えた相手を驚かせるに値する攻撃だった。その主役がそれぞれ3年生。まだ大学では実質2年、けがなどで戦列を離れていた期間を考慮すれば、それ以下の経験しかない。そんなメンバーが経験豊富なスター軍団を相手に一歩もひけをとらないプレーを続けたことに、僕は大きな手応えを感じた。
2、オフェンスの下級生が踏ん張った。
この日の先発に名を連ねたOLは左から井若、森田、光岡、松永、村田。4年生は井若、3年生は光岡、残る3人は2年生である。これまた大学でプレーしたのは実質1年かそれ未満という顔ぶれだったが、それが強力な相手ディフェンスに立ち向かった。もちろんずたずたに切り裂かれ、QBがサックを受ける場面が何度もあったが、逆に味方のRBのために走路を空ける場面もあった。3Qの終盤、自陣23ヤードからRB高松が77ヤードを独走してTDに持ち込んだのがその一つである。真ん中のレーンがきれいに開いていたから高松のスピードが生かされ、独走TDに結びついた。いくら相手が強くても、ラインがやるべきことを完遂すれば、道は開けることを実証した場面であり、下級生は大きな手応えを掴んだはずだ。
3、レシーバー陣のブロックが素晴らしかった。
例えば、上記、高松が独走TDを決めた時のWR松井のブロック。独走する高松に左から追いすがろうとする相手DBを追いかけ、走路をふさいでいたが、もう一人のDBが右から俊足を飛ばして追いかけて来るのに気付いた瞬間、右にコースを変え、即座に横からの強力なブロックで相手を仕留めた。そのスピード、判断力、そして強力なブロック。その場面をrtvの画面で再確認したが、何度見てもしびれる。昨年の立命館との試合でWR池永君がTDを挙げた時にも、似たような場面があったが、今度は競り合う相手が信じられないようなスピードを持った外国人DBだっただけに、余計に彼のポテンシャルの高さが光った。ファイターズ史上、最高のレシーバーになると監督が期待している通りの活躍であり、このプレーを見ただけで溜飲が下がる思いをしたのは、僕だけではあるまい。
以上、3つの例を見ただけでも、このチームが可能性に満ちていることが理解してもらえるだろう。さらにいえば、この日は主力をけがで欠き、どちらかといえば交代メンバーで揃えたDL陣の健闘も素晴らしかった。最後は相手の個人的な能力に対抗しきれなかったが、彼らが着実に力を付ければ選手層が厚くなる。秋のシーズンが深まるにつれて、選手層の厚さが勝敗を分けることを考えれば、これもまたうれしい知らせである。
問題は、試合の所々で垣間見たそうした素晴らしいプレーを、一つ一つの点で終わらせず、線にし、面にしていくことである。1対1でも勝ち、チームとしても勝つ。それをどのように実現していくか。チームの現在位置を明らかにし、これから進むべき道を明らかにしてもらえたと考えれば、「完敗」にも大きな意味がある。
何度もいうが、ファイターズは発展途上にある学生チームである。完成形に近い社会人チームに悔しい敗戦を喫したとしても、そこに光明が見つかれば、それは負けではない。その一筋、二筋の光明を手掛かりに、今後、チームをどのように鍛えて行くか、個人個人の能力をどう高めていくか。勝負はそこにかかっている。めげている余裕ない。
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