石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(3)「想定の範囲内。こんなもんや」
今季の初戦は、慶応大学との対戦。15日、神戸市の王子スタジアムに満員の観衆を集めて開かれた。空は曇っているが、暖かい。ときおり、散り始めた桜の花びらが風に乗って飛んでくる。
大学の新入生歓迎プログラムの一つに組み込まれた関係か、今春入学したばかりと見受けられる新入生や啓明学院の高校生など、若い女性ファンも多い。この女性らに今後、ファイターズの熱烈なファンになってもらうためにも、グラウンドの選手がどんな妙技を見せてくれるか。期待が高まる。
慶応のキック、ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初のランプレーが進まず、QB光藤からWR松井への長いパスも通らず、簡単に攻撃権を失ってしまう。
対して慶応の攻撃陣はアグレッシブ。春の初戦というのに、いきなりノーハドルの攻撃でぐいぐいと攻め込んでくる。ランとパスを巧妙に組合わせた攻撃に目先を狂わせられたのか、守備陣も対応仕切れない。テンポよく3度のダウンを更新され、あっという間にタッチダウン(TD)。キックも決まって0-7。
ファイターズ2度目のシリーズは、自陣25ヤードから。光藤からWR長谷川へのパス、RB山口のラン、TE三木へのパスなどで陣地を進め、敵陣に入ったが、ここで痛恨のターンオーバー。光藤からWR小田に投じたパスは、小田の胸に入ったが、それをレシーバーがお手玉した瞬間に相手DBにボールを奪い取られてしまった。
思わぬ好機に慶応の選手達が勢い付く。即座に長いパスを通してゴール前25ヤード。ここはファイターズの守備陣が踏ん張ってなんとかフィールドゴールの3点でしのいだが、得点は0-10。2月から3月は体を鍛え、基礎的なスキルを高める練習が中心で、チーム練習はほとんどできていなかったから、苦しい戦いになるとは予測していたけれども、ここまで一方的な展開になるとは思いもしなかった。やはり昨年のチームを支えた4年生がごっそり抜けた影響は大きいことを思い知らされる。
さて、今季新しく試合に出るようになったメンバーがどこまで奮起するか。彼らの奮起を促すために、昨年から試合に出ていたメンバーがどんなお手本を見せるか。そこに注目していると、やってくれました。まずはRB高松が67ヤードのキックオフリターン。右サイドでボールを受け、一端、右に走ると見せかけて即座に左にカット。そのまま左サイドを駆け上がった。試合経験が豊富な4年生ならではの走りだった。
相手陣29ヤードからの攻撃。ファイターズはRB山口、WR亀山、RB山本と試合経験の豊富なメンバーに次々とボールを集めて陣地を進める。第2Qに入ってすぐのプレーで山本がゴール中央に飛び込んでTD。K小川のキックも決まって7-10と追い上げる。
これでなんとか落ち着いた攻撃陣。次に見せたのもやはり亀山と山口。まずは亀山が相手パントを判断よくキャッチし、12ヤードのリターン。相手陣38ヤードからの次の攻撃シリーズでは、山口がドロープレーで中央を突破し、そのままゴールまで走り込んでTD。腰を落としたバランスのよい走りで相手タックルを、2人、3人と交わしていく。まるでウナギのような走り方。最近のファイターズには見掛けないタイプの選手だが、相手にとってはやっかいな選手だろう。
これで14-10と逆転したが、慶応の戦意は衰えない。相変わらずのノーハドルオフェンスでぐいぐいと陣地を進め、仕上げは見事なTDパス。14-17と慶応がリードしたまま前半は終了。
後半に入っても互いに攻撃が続かず、3Qは0-0。
4Qに入ると、ファイターズのレシーバー陣が奮起する。まずは光藤からWR安在への短いパスをとってダウンを更新。次は松井へのロングパス。センターライン付近からゴール前1ヤードまで45ヤードを一気に進める。相手DBと競り合ってキャッチした松井も素晴らしかったが、そこへ正確に投げ込んだ光藤もすごい。二人はともに3年生。今季の攻撃陣で必殺のホットラインとして機能しそうな予感がする。
残り1ヤードをこれも3年生のRB中村が中央に飛び込んでTD。21-17とファイターズが逆転する。勢いに乗った光道は次のシリーズでもWR小田に23ヤードのタッチダウンパスを決め、終わって見れば、31-17でファイターズの勝利。攻守ともに課題は多かったが、司令塔の光藤が期待通りに活躍し、同じ3年生のレシーバー陣(松井、小田、長谷川)とRB陣(山口、中村)の成長という収穫もあった。
しかし、双方の力の差は、得点差ほどにはなかった。春の初戦だというのに、終始ノーハドルの攻撃を押し通したオフェンス、関学のOL陣を簡単に突破してQBやボールキャリアに襲いかかったディフェンス。そしてこの試合にかける意気込み。そうした点では慶応がはるかに勝っていたようにも思える。
試合後、鳥内監督が記者団の質問に「見ての通り。こんなもんや。いいのも悪いのも想定の範囲内。いいのは伸ばせばいいし、悪いとこはなおさなアカン。悪いとこが分かったのが収穫」と答えていたが、まさにその通り。すべては、この日の「収穫」を糧に、今後どのようにチームを作っていくかにかかっている。この日は出場できなかった4年生を含め、チーム全体の底上げに課題を突きつけたという意味では、ありがたい試合だった。
大学の新入生歓迎プログラムの一つに組み込まれた関係か、今春入学したばかりと見受けられる新入生や啓明学院の高校生など、若い女性ファンも多い。この女性らに今後、ファイターズの熱烈なファンになってもらうためにも、グラウンドの選手がどんな妙技を見せてくれるか。期待が高まる。
慶応のキック、ファイターズのレシーブで試合開始。しかし、最初のランプレーが進まず、QB光藤からWR松井への長いパスも通らず、簡単に攻撃権を失ってしまう。
対して慶応の攻撃陣はアグレッシブ。春の初戦というのに、いきなりノーハドルの攻撃でぐいぐいと攻め込んでくる。ランとパスを巧妙に組合わせた攻撃に目先を狂わせられたのか、守備陣も対応仕切れない。テンポよく3度のダウンを更新され、あっという間にタッチダウン(TD)。キックも決まって0-7。
ファイターズ2度目のシリーズは、自陣25ヤードから。光藤からWR長谷川へのパス、RB山口のラン、TE三木へのパスなどで陣地を進め、敵陣に入ったが、ここで痛恨のターンオーバー。光藤からWR小田に投じたパスは、小田の胸に入ったが、それをレシーバーがお手玉した瞬間に相手DBにボールを奪い取られてしまった。
思わぬ好機に慶応の選手達が勢い付く。即座に長いパスを通してゴール前25ヤード。ここはファイターズの守備陣が踏ん張ってなんとかフィールドゴールの3点でしのいだが、得点は0-10。2月から3月は体を鍛え、基礎的なスキルを高める練習が中心で、チーム練習はほとんどできていなかったから、苦しい戦いになるとは予測していたけれども、ここまで一方的な展開になるとは思いもしなかった。やはり昨年のチームを支えた4年生がごっそり抜けた影響は大きいことを思い知らされる。
さて、今季新しく試合に出るようになったメンバーがどこまで奮起するか。彼らの奮起を促すために、昨年から試合に出ていたメンバーがどんなお手本を見せるか。そこに注目していると、やってくれました。まずはRB高松が67ヤードのキックオフリターン。右サイドでボールを受け、一端、右に走ると見せかけて即座に左にカット。そのまま左サイドを駆け上がった。試合経験が豊富な4年生ならではの走りだった。
相手陣29ヤードからの攻撃。ファイターズはRB山口、WR亀山、RB山本と試合経験の豊富なメンバーに次々とボールを集めて陣地を進める。第2Qに入ってすぐのプレーで山本がゴール中央に飛び込んでTD。K小川のキックも決まって7-10と追い上げる。
これでなんとか落ち着いた攻撃陣。次に見せたのもやはり亀山と山口。まずは亀山が相手パントを判断よくキャッチし、12ヤードのリターン。相手陣38ヤードからの次の攻撃シリーズでは、山口がドロープレーで中央を突破し、そのままゴールまで走り込んでTD。腰を落としたバランスのよい走りで相手タックルを、2人、3人と交わしていく。まるでウナギのような走り方。最近のファイターズには見掛けないタイプの選手だが、相手にとってはやっかいな選手だろう。
これで14-10と逆転したが、慶応の戦意は衰えない。相変わらずのノーハドルオフェンスでぐいぐいと陣地を進め、仕上げは見事なTDパス。14-17と慶応がリードしたまま前半は終了。
後半に入っても互いに攻撃が続かず、3Qは0-0。
4Qに入ると、ファイターズのレシーバー陣が奮起する。まずは光藤からWR安在への短いパスをとってダウンを更新。次は松井へのロングパス。センターライン付近からゴール前1ヤードまで45ヤードを一気に進める。相手DBと競り合ってキャッチした松井も素晴らしかったが、そこへ正確に投げ込んだ光藤もすごい。二人はともに3年生。今季の攻撃陣で必殺のホットラインとして機能しそうな予感がする。
残り1ヤードをこれも3年生のRB中村が中央に飛び込んでTD。21-17とファイターズが逆転する。勢いに乗った光道は次のシリーズでもWR小田に23ヤードのタッチダウンパスを決め、終わって見れば、31-17でファイターズの勝利。攻守ともに課題は多かったが、司令塔の光藤が期待通りに活躍し、同じ3年生のレシーバー陣(松井、小田、長谷川)とRB陣(山口、中村)の成長という収穫もあった。
しかし、双方の力の差は、得点差ほどにはなかった。春の初戦だというのに、終始ノーハドルの攻撃を押し通したオフェンス、関学のOL陣を簡単に突破してQBやボールキャリアに襲いかかったディフェンス。そしてこの試合にかける意気込み。そうした点では慶応がはるかに勝っていたようにも思える。
試合後、鳥内監督が記者団の質問に「見ての通り。こんなもんや。いいのも悪いのも想定の範囲内。いいのは伸ばせばいいし、悪いとこはなおさなアカン。悪いとこが分かったのが収穫」と答えていたが、まさにその通り。すべては、この日の「収穫」を糧に、今後どのようにチームを作っていくかにかかっている。この日は出場できなかった4年生を含め、チーム全体の底上げに課題を突きつけたという意味では、ありがたい試合だった。
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