石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」

(24)4年生の覚悟

投稿日時:2016/10/25(火) 09:01rss

 関大戦の後、古い友人から「関大戦は4年生の覚悟が伝わるいい試合。お見それしました」という短いメールが届いた。彼は僕が朝日新聞で大阪府警担当をしていた頃、互いに抜いた抜かれたと張り合ってきたライバル社のエース記者。もう35年以上の付き合いになるが「ファイターズ命」という共通の趣味もあって、電話するたびに話が弾む。
 メールが届いた後、目の前の仕事をほったらかして、しばしファイターズ談義を繰り広げた。
 確かに4年生だけでなくグラウンドに出ている選手全員の覚悟が伝わってくる試合だった。とりわけ、双方がガチンコで対決した立ち上がりの攻防は、見応え十分。まずはその部分を振り返って見よう。
 コイントスに勝った関大が後半のレシーブを選択して試合開始。関大のキックは自陣深く蹴り込まれ、ファイターズは自陣12ヤードの苦しい位置からの攻撃となった。
 まずはRB野々垣と橋本にボールを持たせて6ヤード。しかし、第3ダウン4ヤードという微妙な距離が残っている。さてどうするか、という場面でQB伊豆が魂の中央突破で8ヤードを稼ぎ、ダウン更新。ようやくパスができる位置まで陣地を進める。
 ここでWR池永がジェットモーションからボールを受けて3ヤード。相手守備に的を絞らせないまま、今度は伊豆からWR亀山への長いパス。第一ターゲットではなかったというが、忠実に自分のコースを走り切った亀山が確実にキャッチし、そのままゴールまで駆け込んで71ヤードのTD。西岡のキックも決まって7-0。
 自ら走って投げた伊豆も、最初に陣地を回復した野々垣、橋本、池永、冷静にキックを決めた西岡も4年生。TDパスをキャッチした亀山こそ3年生だが、自陣ゴール前でしっかり伊豆を守ったOLの主力も4年生。確かに4年生の覚悟が伝わる立ち上がりだった。
 代わって関大の最初の攻撃は相手陣33ヤードから。関西リーグのリーディングラッシャー、地村主将を中心に、中央のランプレーで攻めてきたが、ここはファイターズディフェンス陣の守りが堅く、3&アウトで攻守交代。しかし、相手のパントはファイターズ陣の奥深くまで蹴り込まれ、ファイターズは再び自陣14ヤードからの攻撃を強いられる。野々垣、橋本のランで5ヤードを回復したが、結局はパントに追い込まれる。しかし、ここで思わぬ出来事。ファイターズにスナップミスが出てセーフティーとなり、関大に2点を献上してしまう。
 せっかくのTDで挙げた7点差が5点差。おまけに続く関大の攻撃はハーフライン付近から。まずは相手のエースRBが中央を突破して12ヤード。一気に追い上げられそうな気配だったが、ここでDB小椋が起死回生のインターセプト。15ヤードほどリターンして攻撃権を奪い返す。
 そこから亀山へのパス、RB加藤や橋本、山本らのランで陣地を進め、ゴール前4ヤードまで前進。しかし、そこからが進まない。4度続けて中央のランプレーをコールしたが、ことごとく跳ね返されて攻守交代。このあたり、相手守備陣も強力。試合前に鳥内監督が「ゴール前までは進めても、そこからが難しい」と警戒されていた通りの展開である。
 ファイターズベンチにとって嫌な感じが漂う中、LB山岸を中心に守備陣が踏ん張る。何とか相手の攻撃をパントに追いやり、再びハーフライン付近からファイターズの攻撃。再び活路を開いたのが伊豆から亀山への30ヤードのパス。一気にゴール前20ヤード付近まで進む。ここで加藤がドロープレーで中央を抜け出し、一気にTD。2Q終了間際にも西岡が36ヤードのフィールドゴールを決め、前半を16-2で折り返した。
 後半は、相手が戦意を失ったのか、守りが淡泊になる。そこをついて伊豆のキーププレーでTD。4Qになると野々垣のラン、WR水野の29ヤードランでTDを重ね、終わって見れば37-2。相手を完封した守備陣と、パスとランを効果的に使って相手守備陣を翻弄した攻撃陣。双方のリズムが今季初めてかみ合って、何とか大きな山場を乗り切った。
 このように試合を振り返ってみると、名前の挙がった多くは4年生。ほかにも守りの中心になったDL松本、安田、DB岡本らも4年生。夏の合宿中にけがをして、しばらく戦列を離れていたDB小池も復帰してきた。攻撃陣でも、ラインの松井、高橋、藏野、清村らがはつらつとした動きを見せた。もちろん3年生も負けてはいない。相手守備陣の激しいタックルにも負けず確実にボールをキャッチした亀山や前田、OLを奮起させた井若。守備陣でもDL藤木、急きょLBとして出場した柴田、立ち上がりのピンチに見事なインターセプトを決めた小椋らが気迫のこもったプレーを見せてくれた。
 こうした総和が「覚悟の見えた試合」ということだろう。攻守ともに4年生が活躍し、チームが初めて結束できた試合といってもいい。
 しかし、シーズンはここからが本番である。関大に勝ったからといって優勝が決まったわけではない。困難な戦いの初戦に負けなかったというだけである。これからの京大、立命館との対戦を考えると、まだまだ詰めていかなければならない点が多い。それは試合後、少しばかり話を聞く機会のあった主将の山岸君も、主務でありキッキングチームの要でもある石井君も口を揃えていた。
 前半の苦しいせめぎ合いをしのいだことを自信とし、至らなかった点を克服して次なる試合につなげてもらいたい。目的を持った鍛錬こそが栄冠につながる道である。
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