石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(18)「文武両道」の話
金曜日の夕方、高校生との小論文の勉強会が始まる前に、上ケ原のグラウンドに練習を見学に出掛けた。
10日から15日までの東鉢伏山での合宿に続く、上ケ原での2次合宿。その最終日とあって、なかなか気合の入った練習が続いていた。特定のパートを集中して見ている訳ではないし、なにより素人の僕がボヤーと見ているだけだから、その詳細については適切に報告する能力はない。ただ、全体の雰囲気を感じ取るだけだ。
例えば、春のシーズン中の練習、夏休みになって再開されてからの練習、鉢伏の合宿中の雰囲気、そしていま現在の雰囲気。あるいは4年生を中心とした個々の選手の動き、マネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフの行動、コーチの声の調子。それらのことを、練習をかいま見る中で感じ取り、そこからなにがしかの感想を持つだけである。
その感想を一言で表現すれば「気合が入ってきた」。選手の表情は精悍(せいかん)さを加えているし、一つひとつの動きのスピードも上がってきた。なにより、選手の集散が激しいから、グラウンドが狭く見える。
こうなってくると、毎年の事だが、シーズンの開幕が近付いてきたことを実感する。そう思って見れば、今季に備えた新しいプレーもいくつか確認されていたようだ。
そうこうするうちに、アシスタントディレクターの宮本氏が現れた。手には、刷り上がったばかりの今季のイヤーブックを何冊か持っている。
早速、1冊頂戴し、読ませてもらう。
いつもながら、盛りだくさんの内容だ。恒例の選手紹介から、過去の戦績、相手チームの分析、今季にかける4年生の意気込みなどが丁寧に紹介されている。高等部、中学部、啓明学院の高校、中学、そして女子タッチフットボール部まで、選手名鑑だけでも大変な分量だ。
今年はこれを、竹田ゆいマネジャーが中心になって制作したそうだ。広告集めから取材、写真の手配、記事の編集、校正と続く作業の大変さは、僕も新聞づくりの現場にいるだけによく分かる。これだけの水準のイヤーブックを毎年、シーズン開幕という締め切りに遅れることなく、かつ誤りなく発行できるというだけでも、ファイターズというチームの底力が想像できる。
このイヤーブックには毎年、趣向を変えて掲載してくれる特集がある。今年のそれは「審判特集」と「スペシャルインタビュー」。インタビューは、6月下旬に来日された南メソジスト大学のダン・モリソンコーチと大村和輝コーチによる「関学の可能性」をテーマにした対談である。
いつものことながら読み応えがある。その内容も面白かったが、それ以上に、英語で行われたこの対談を翻訳したのがファイターズの現役選手だということに驚かされた。
大村コーチに聞くと、翻訳の作業は2年生のDL畑田峻輔君と4年生のOL藤本翔平君が担当。畑田君が直訳した文章を、藤本君が日本語として仕上げたそうだ。
英語が苦手で、生涯苦しめられた僕にとっては、アメリカの人の英語を聞き取り、それをさらさらと翻訳できるなんて、想像を絶する世界。もちろん、いまの関西学院は、国際化をうたい、英語教育のレベルも上がっているそうだから、現役の学生諸君にとっては「できて当然」のことかもしれない。けれども、毎日、練習に明け暮れ、勉強の時間も確保するのが難しいアメフット部員が、こういう作業をこともなげにやってしまうというのは、僕にとっては驚きだった。
「文武両道」と、口でいうのはたやすい。けれども、それを実行するのは難しい。学内の試験で単位を取得するのに苦労している選手が少なくないという話を聞くにつけ、文武両道を鮮やかに成し遂げている選手の話を聞くだけでもうれしい。
関学には「MDS(複数分野専攻制)」といって、所属する学部のカリキュラムに加えて、他の学部等から提供されたプログラムを体系的に履修することによって学部の枠を超えた領域を学ぶことができる制度があり、優秀な学生がそれに挑んでいる。聞けば、藤本君はそれにも挑戦、優秀な成績を収めているそうだ。
鉢伏の合宿で、ぶっ倒れそうになりながら、根性練習に取り組んでいた彼の姿と「MDS」に挑む彼の姿が二重写しになって、僕はいま、ファイターズというチームに対する敬意をさらに深めたところである。
10日から15日までの東鉢伏山での合宿に続く、上ケ原での2次合宿。その最終日とあって、なかなか気合の入った練習が続いていた。特定のパートを集中して見ている訳ではないし、なにより素人の僕がボヤーと見ているだけだから、その詳細については適切に報告する能力はない。ただ、全体の雰囲気を感じ取るだけだ。
例えば、春のシーズン中の練習、夏休みになって再開されてからの練習、鉢伏の合宿中の雰囲気、そしていま現在の雰囲気。あるいは4年生を中心とした個々の選手の動き、マネジャーやトレーナー、アナライジングスタッフの行動、コーチの声の調子。それらのことを、練習をかいま見る中で感じ取り、そこからなにがしかの感想を持つだけである。
その感想を一言で表現すれば「気合が入ってきた」。選手の表情は精悍(せいかん)さを加えているし、一つひとつの動きのスピードも上がってきた。なにより、選手の集散が激しいから、グラウンドが狭く見える。
こうなってくると、毎年の事だが、シーズンの開幕が近付いてきたことを実感する。そう思って見れば、今季に備えた新しいプレーもいくつか確認されていたようだ。
そうこうするうちに、アシスタントディレクターの宮本氏が現れた。手には、刷り上がったばかりの今季のイヤーブックを何冊か持っている。
早速、1冊頂戴し、読ませてもらう。
いつもながら、盛りだくさんの内容だ。恒例の選手紹介から、過去の戦績、相手チームの分析、今季にかける4年生の意気込みなどが丁寧に紹介されている。高等部、中学部、啓明学院の高校、中学、そして女子タッチフットボール部まで、選手名鑑だけでも大変な分量だ。
今年はこれを、竹田ゆいマネジャーが中心になって制作したそうだ。広告集めから取材、写真の手配、記事の編集、校正と続く作業の大変さは、僕も新聞づくりの現場にいるだけによく分かる。これだけの水準のイヤーブックを毎年、シーズン開幕という締め切りに遅れることなく、かつ誤りなく発行できるというだけでも、ファイターズというチームの底力が想像できる。
このイヤーブックには毎年、趣向を変えて掲載してくれる特集がある。今年のそれは「審判特集」と「スペシャルインタビュー」。インタビューは、6月下旬に来日された南メソジスト大学のダン・モリソンコーチと大村和輝コーチによる「関学の可能性」をテーマにした対談である。
いつものことながら読み応えがある。その内容も面白かったが、それ以上に、英語で行われたこの対談を翻訳したのがファイターズの現役選手だということに驚かされた。
大村コーチに聞くと、翻訳の作業は2年生のDL畑田峻輔君と4年生のOL藤本翔平君が担当。畑田君が直訳した文章を、藤本君が日本語として仕上げたそうだ。
英語が苦手で、生涯苦しめられた僕にとっては、アメリカの人の英語を聞き取り、それをさらさらと翻訳できるなんて、想像を絶する世界。もちろん、いまの関西学院は、国際化をうたい、英語教育のレベルも上がっているそうだから、現役の学生諸君にとっては「できて当然」のことかもしれない。けれども、毎日、練習に明け暮れ、勉強の時間も確保するのが難しいアメフット部員が、こういう作業をこともなげにやってしまうというのは、僕にとっては驚きだった。
「文武両道」と、口でいうのはたやすい。けれども、それを実行するのは難しい。学内の試験で単位を取得するのに苦労している選手が少なくないという話を聞くにつけ、文武両道を鮮やかに成し遂げている選手の話を聞くだけでもうれしい。
関学には「MDS(複数分野専攻制)」といって、所属する学部のカリキュラムに加えて、他の学部等から提供されたプログラムを体系的に履修することによって学部の枠を超えた領域を学ぶことができる制度があり、優秀な学生がそれに挑んでいる。聞けば、藤本君はそれにも挑戦、優秀な成績を収めているそうだ。
鉢伏の合宿で、ぶっ倒れそうになりながら、根性練習に取り組んでいた彼の姿と「MDS」に挑む彼の姿が二重写しになって、僕はいま、ファイターズというチームに対する敬意をさらに深めたところである。
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