石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(8)歳々年々人不同
先日、プロ野球のナイター中継を見ていたら、解説の有田修三さんが日米野球の違いについて、こんな意味のことを言っていた。
「アメリカは人を集めてチームを作るが、日本は人を育ててチームを作る」。つまり、アメリカは豊富な資金力によって、各地から有能な選手を集めてチームを強化する。ところが、日本ではすぐに使える人材が限られているから、その少ない人材を懸命に育ててチームを作っていくというような意味だった。 日本高校野球連盟に加盟している硬式野球チームは4132校。それに大学や社会人、独立リーグまである野球にして「少ない人材を育ててチームをつくらなければならない」というのだから、競技人口が野球よりはるかに少ないアメフットの場合はどうなるか。
まずは選手を確保することである。高校の試合に足を運び、数少ない選手の中から有望な人材をリクルートしなければならない。能力の高い選手は限られているから、ライバルチームと奪い合いになる。同時に他のスポーツをしている選手にも目を向け、アメフットは未経験でも運動能力が高く、体力的にも優れた選手を捜し出さなければならない。ファイターズでは毎年、他の競技経験者の中から先発メンバーに名を連ねる部員が出てくるが、こうした選手がいないと、選手層はますます薄くなる。
選手が確保できれば、次は練習である。体を鍛え、技を教え、セオリーを学ばせなければならない。頭と体の鍛錬あるのみだ。しかし、ミーティングを重ね、練習量を増やしても、実戦で経験を積まなければ、なかなか身につかないことが多い。いわゆる経験知。成功して自信を付け、失敗して学ぶことの大切さである。
しかし、その試合数が限られている。今季のファイターズでいえば、春は6試合。JV戦2試合を入れても8試合しか組まれていない。前期試験の関係から6月下旬になると練習試合ができなくなるので、春のシーズンは4月後半から実質2カ月。激しいコンタクトスポーツであり、必然的に体力を消耗するアメフットというスポーツの特性から、毎週試合日程をくむのは無理であり、これで限界という。
9月から始まる秋のリーグ戦は7試合。ボウルゲームに出場しなかったら、これでシーズンは終わりである。つまり、「育てながらチームを作っていく」といっても、その経験を積ませる舞台は年に春と秋あわせて13試合しかないのである。
大学は4年間。この短い期間、数少ない試合で、多くの選手に経験知を積ませ、なおかつ勝利も獲得していくというのは、並大抵のことではない。下級生はアメフット選手としての体力が付くまでは試合に出してもらえないし、せっかく先発メンバーに名を連ねても、けがで出られないことも少なくない。
だから、選手にとっては、毎試合が真剣勝負。与えられたチャンスは何があってもつかまなければならない。試合で経験を積み、次に飛躍する足場を固めなければならない。
15日にエキスポフラッシュフィールドで行われた同志社戦が、その象徴のような試合だった。
その前の週に、川崎で日大との試合があったばかりとあって、この試合はエースQBの加藤とエースレシーバーの松原がお休み。エースランナーの松岡も、前半早々にベンチに引っ込んだ。代わりにQBは2年生の遠藤が前半を、第3Qは糟谷(3年)、第4Qは畑(2年)が出て、試合を牽引した。
彼らはこれまで、試合の大勢が決まってから出場したことはあったが、オフェンスラインを先発メンバーで固めたときに試合に出た経験はほとんどない。どんなプレーをし、どんな失敗をし、何を学んでくれるか、ドキドキしながら見ていた。
3人とも、恵まれた才能の一端をそれぞれ披露してくれた。同時に、まだまだ発展途上、加藤との距離は開いているという現実も見せつけられた。
今後、経験を積んでいくことで克服できそうな課題もあれば、よほど覚悟を決めて取り組まなければならない課題もあった。それは3人のQBだけではない。この日、とっかえひっかえしてグラウンドに出た選手のすべてにいえること。試合で相手と対面し、相手の当たりやスピードを体感して初めて分かる課題がどっさり見つかったことと思う。日ごろの仲間内での練習では気がつかない、スタメンで出場している選手たちとの力の差も実感できただろう。
そういう実感が経験知になり、飛躍するためのステップになるのである。
年々歳々花相似 歳々年々人不同
という。毎年、毎年卒業生を送り出し、新しいメンバーを迎えて、また新しいチームとして発展する。グラウンドを取り巻く環境は同じでも、そこで活動する選手は同じではない。日々の鍛錬で成長し、新たな課題を見つけて発展していく。それが、自発的、自覚的に行われていくチームが強いチームであり、勝つ資格のあるチームということだろう。
「アメリカは人を集めてチームを作るが、日本は人を育ててチームを作る」。つまり、アメリカは豊富な資金力によって、各地から有能な選手を集めてチームを強化する。ところが、日本ではすぐに使える人材が限られているから、その少ない人材を懸命に育ててチームを作っていくというような意味だった。 日本高校野球連盟に加盟している硬式野球チームは4132校。それに大学や社会人、独立リーグまである野球にして「少ない人材を育ててチームをつくらなければならない」というのだから、競技人口が野球よりはるかに少ないアメフットの場合はどうなるか。
まずは選手を確保することである。高校の試合に足を運び、数少ない選手の中から有望な人材をリクルートしなければならない。能力の高い選手は限られているから、ライバルチームと奪い合いになる。同時に他のスポーツをしている選手にも目を向け、アメフットは未経験でも運動能力が高く、体力的にも優れた選手を捜し出さなければならない。ファイターズでは毎年、他の競技経験者の中から先発メンバーに名を連ねる部員が出てくるが、こうした選手がいないと、選手層はますます薄くなる。
選手が確保できれば、次は練習である。体を鍛え、技を教え、セオリーを学ばせなければならない。頭と体の鍛錬あるのみだ。しかし、ミーティングを重ね、練習量を増やしても、実戦で経験を積まなければ、なかなか身につかないことが多い。いわゆる経験知。成功して自信を付け、失敗して学ぶことの大切さである。
しかし、その試合数が限られている。今季のファイターズでいえば、春は6試合。JV戦2試合を入れても8試合しか組まれていない。前期試験の関係から6月下旬になると練習試合ができなくなるので、春のシーズンは4月後半から実質2カ月。激しいコンタクトスポーツであり、必然的に体力を消耗するアメフットというスポーツの特性から、毎週試合日程をくむのは無理であり、これで限界という。
9月から始まる秋のリーグ戦は7試合。ボウルゲームに出場しなかったら、これでシーズンは終わりである。つまり、「育てながらチームを作っていく」といっても、その経験を積ませる舞台は年に春と秋あわせて13試合しかないのである。
大学は4年間。この短い期間、数少ない試合で、多くの選手に経験知を積ませ、なおかつ勝利も獲得していくというのは、並大抵のことではない。下級生はアメフット選手としての体力が付くまでは試合に出してもらえないし、せっかく先発メンバーに名を連ねても、けがで出られないことも少なくない。
だから、選手にとっては、毎試合が真剣勝負。与えられたチャンスは何があってもつかまなければならない。試合で経験を積み、次に飛躍する足場を固めなければならない。
15日にエキスポフラッシュフィールドで行われた同志社戦が、その象徴のような試合だった。
その前の週に、川崎で日大との試合があったばかりとあって、この試合はエースQBの加藤とエースレシーバーの松原がお休み。エースランナーの松岡も、前半早々にベンチに引っ込んだ。代わりにQBは2年生の遠藤が前半を、第3Qは糟谷(3年)、第4Qは畑(2年)が出て、試合を牽引した。
彼らはこれまで、試合の大勢が決まってから出場したことはあったが、オフェンスラインを先発メンバーで固めたときに試合に出た経験はほとんどない。どんなプレーをし、どんな失敗をし、何を学んでくれるか、ドキドキしながら見ていた。
3人とも、恵まれた才能の一端をそれぞれ披露してくれた。同時に、まだまだ発展途上、加藤との距離は開いているという現実も見せつけられた。
今後、経験を積んでいくことで克服できそうな課題もあれば、よほど覚悟を決めて取り組まなければならない課題もあった。それは3人のQBだけではない。この日、とっかえひっかえしてグラウンドに出た選手のすべてにいえること。試合で相手と対面し、相手の当たりやスピードを体感して初めて分かる課題がどっさり見つかったことと思う。日ごろの仲間内での練習では気がつかない、スタメンで出場している選手たちとの力の差も実感できただろう。
そういう実感が経験知になり、飛躍するためのステップになるのである。
年々歳々花相似 歳々年々人不同
という。毎年、毎年卒業生を送り出し、新しいメンバーを迎えて、また新しいチームとして発展する。グラウンドを取り巻く環境は同じでも、そこで活動する選手は同じではない。日々の鍛錬で成長し、新たな課題を見つけて発展していく。それが、自発的、自覚的に行われていくチームが強いチームであり、勝つ資格のあるチームということだろう。
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