石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(7)準備のスポーツ
アメフットは「準備のスポーツ」と呼ばれる。事前に自分のチームと相手チームの長所、短所を見極め、どうすれば相手の長所を無効にし、逆に弱点を突いていけるか。自らの弱点をどうカバーし、長所をより生かすことができるか。
事前にそうしたことを徹底的に研究し、準備して、試合でそれを実現する。一言で言えばそういうことだが、言うは易く、行うのは難しい。
その難しいことをファイターズは、強敵・立命館を相手にやってのけた。
攻めては相手の意表を突くワイルドキャット隊形から変幻自在のランアタックを敢行。相手の注意がランプレーに集まると、今度は強肩のQB、鎌田が鋭いパスをレシーバーに投げ分ける。タイミングを見計らったようにQBスクランブルで陣地を稼ぐ。鋭い動きが持ち味のRB前田と斎藤を同時に起用して相手の注意を分散させ、一瞬の間隙を突いてゴールラインを突破させる。
彼らの走路を開くオフェンスラインやタイトエンドの動きも良かったし、レシーバー陣のブロックも効果的だった。
そうした攻撃が積み重なった結果としての28点である。
守備陣もよく踏ん張った。大型ラインをそろえた相手に、フロントの4人が必死で持ちこたえ、海崎、都賀、永井を中心にしたLB陣が鋭いタックルでラン攻撃を食い止める。能力の高い相手QBのパスで何度も陣地を稼がれたが、DB陣はくじけない。竹原や和泉が相手の動きを予測したような機敏な動きで相手のパスに飛びつく。この試合だけで、2人で3本のインターセプトという活躍。それも素晴らしい能力を持ったQBが自信を持って投じたパスを奪い取ったのだから値打ちがある。
双方ともに取りつ取られつ。互いに必死のプレーで挽回を図る。互いに逆転しあう試合となったが、終わってみれば28ー25。ファイターズがなんとかしのぎきり、勝利を手中にした。
得点が表示された場内の画面を見ながら、僕は何度か上ヶ原のグラウンドで見た練習の模様を振り返り、一人で納得していた。互いに全力を尽くして戦った両チームではあったが、準備という点で、ファイターズがほんの少し上回っていたということだろう、と。
というのは、ほかでもない。この試合の勝敗を左右したワイルドキャット隊形からの攻撃も、RBが強く鋭い体さばきでオフタックルを駆け上がるプレーも、上ヶ原のグラウンドで選手たちが必死に取り組んでいるのを見る機会があったからだ。今年から攻撃陣を背負っている2年生QB鎌田が鋭いパスをWRやTEに繰り返し繰り返し、投げ込んでいる場面も見ていた。
守備陣もまた、大村監督や大寺コーチの厳しいチェックを受けながら、相手チームの動きを想定した動きを何度も繰り返していた。そうした濃密な時間が積み重なった結果としての勝利であろう。
考えてみれば、この時期、ファイターズの練習には、フルタイムでチームを指導されている大村監督、香山、梅本の両コーチに加え、勤務時間中は大学の幹部職員としての重責を担われている堀口、神田、大寺コーチが勤務終了後、グラウンドに集合。それぞれが担当されているパートの練習に付き添うように指導されている。土曜日や日曜日には、アシスタントコーチも次々に指導に来て下さる。審判として活動しているOBがグラウンドに顔を見せ、実戦練習で選手の動きをチェックし、反則と判定されるプレーについて、厳しく注意を促されている場面を目撃したこともある。
それもこれもが、勝つための準備の一環である。グラウンドで戦う選手はもちろん、そうしたスタッフの行動も含めた「準備」の充実が、28ー25という結果に表れたのではないか。
そんなことを考え、次なる甲子園ボウル出場校決定戦の見通しに思いをはせると、またやっかいなことが浮かんできた。甲子園ボウルに出場するためには、関西大会で苦しんだ関大、あるいは立命館と再度戦い、そこで勝つことが不可欠ということである。
通常の試合でも、相手は強い。関大か立命か。対戦相手はまだ決まっていないが、どちらが勝ち抜いてくるにしても、相手はファイターズに敗れたことで一層発憤し、雪辱の気持ちを固めて向かってくる。それにどう対抗するか。
残された時間は3週間足らず。その時間をファイターズの諸君はどう過ごすか。強敵に勝利したことを糧に、さらなる高みを目指して努力するのか。それとも、1度目の試合がうまく運んだことに満足してしまうのか。
フットボールが「準備のスポーツ」といわれるのは、勝利の後の振る舞いや、心の持ちようまでを含めてのことである。勝ってかぶとの緒を締めよ、という。その言葉通りの行動で、次に備えてもらいたい。それができてこそ「ファイターズ」である。
そんなことを自分に言い聞かせながら、長居公園を後にした。秋は日暮れが早い。日はすっかり落ちていた。
事前にそうしたことを徹底的に研究し、準備して、試合でそれを実現する。一言で言えばそういうことだが、言うは易く、行うのは難しい。
その難しいことをファイターズは、強敵・立命館を相手にやってのけた。
攻めては相手の意表を突くワイルドキャット隊形から変幻自在のランアタックを敢行。相手の注意がランプレーに集まると、今度は強肩のQB、鎌田が鋭いパスをレシーバーに投げ分ける。タイミングを見計らったようにQBスクランブルで陣地を稼ぐ。鋭い動きが持ち味のRB前田と斎藤を同時に起用して相手の注意を分散させ、一瞬の間隙を突いてゴールラインを突破させる。
彼らの走路を開くオフェンスラインやタイトエンドの動きも良かったし、レシーバー陣のブロックも効果的だった。
そうした攻撃が積み重なった結果としての28点である。
守備陣もよく踏ん張った。大型ラインをそろえた相手に、フロントの4人が必死で持ちこたえ、海崎、都賀、永井を中心にしたLB陣が鋭いタックルでラン攻撃を食い止める。能力の高い相手QBのパスで何度も陣地を稼がれたが、DB陣はくじけない。竹原や和泉が相手の動きを予測したような機敏な動きで相手のパスに飛びつく。この試合だけで、2人で3本のインターセプトという活躍。それも素晴らしい能力を持ったQBが自信を持って投じたパスを奪い取ったのだから値打ちがある。
双方ともに取りつ取られつ。互いに必死のプレーで挽回を図る。互いに逆転しあう試合となったが、終わってみれば28ー25。ファイターズがなんとかしのぎきり、勝利を手中にした。
得点が表示された場内の画面を見ながら、僕は何度か上ヶ原のグラウンドで見た練習の模様を振り返り、一人で納得していた。互いに全力を尽くして戦った両チームではあったが、準備という点で、ファイターズがほんの少し上回っていたということだろう、と。
というのは、ほかでもない。この試合の勝敗を左右したワイルドキャット隊形からの攻撃も、RBが強く鋭い体さばきでオフタックルを駆け上がるプレーも、上ヶ原のグラウンドで選手たちが必死に取り組んでいるのを見る機会があったからだ。今年から攻撃陣を背負っている2年生QB鎌田が鋭いパスをWRやTEに繰り返し繰り返し、投げ込んでいる場面も見ていた。
守備陣もまた、大村監督や大寺コーチの厳しいチェックを受けながら、相手チームの動きを想定した動きを何度も繰り返していた。そうした濃密な時間が積み重なった結果としての勝利であろう。
考えてみれば、この時期、ファイターズの練習には、フルタイムでチームを指導されている大村監督、香山、梅本の両コーチに加え、勤務時間中は大学の幹部職員としての重責を担われている堀口、神田、大寺コーチが勤務終了後、グラウンドに集合。それぞれが担当されているパートの練習に付き添うように指導されている。土曜日や日曜日には、アシスタントコーチも次々に指導に来て下さる。審判として活動しているOBがグラウンドに顔を見せ、実戦練習で選手の動きをチェックし、反則と判定されるプレーについて、厳しく注意を促されている場面を目撃したこともある。
それもこれもが、勝つための準備の一環である。グラウンドで戦う選手はもちろん、そうしたスタッフの行動も含めた「準備」の充実が、28ー25という結果に表れたのではないか。
そんなことを考え、次なる甲子園ボウル出場校決定戦の見通しに思いをはせると、またやっかいなことが浮かんできた。甲子園ボウルに出場するためには、関西大会で苦しんだ関大、あるいは立命館と再度戦い、そこで勝つことが不可欠ということである。
通常の試合でも、相手は強い。関大か立命か。対戦相手はまだ決まっていないが、どちらが勝ち抜いてくるにしても、相手はファイターズに敗れたことで一層発憤し、雪辱の気持ちを固めて向かってくる。それにどう対抗するか。
残された時間は3週間足らず。その時間をファイターズの諸君はどう過ごすか。強敵に勝利したことを糧に、さらなる高みを目指して努力するのか。それとも、1度目の試合がうまく運んだことに満足してしまうのか。
フットボールが「準備のスポーツ」といわれるのは、勝利の後の振る舞いや、心の持ちようまでを含めてのことである。勝ってかぶとの緒を締めよ、という。その言葉通りの行動で、次に備えてもらいたい。それができてこそ「ファイターズ」である。
そんなことを自分に言い聞かせながら、長居公園を後にした。秋は日暮れが早い。日はすっかり落ちていた。
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