石井晃のKGファイターズコラム「スタンドから」
(16)東鉢伏から
先週末、仕事の隙間を縫って東鉢伏に車を走らせた。8日から始まったファイターズの合宿を見学するのが目的である。
午前4時半過ぎに仁川の自宅を出発。辺りは薄暗いが、その分、行き交う車は少なく、普段は混雑している宝塚西トンネル付近も快調に走れる。赤松峠付近から舞鶴道に入ればさらに車が少なくなり、快適なドライブが続く。高速道路を降りると、コンビニに立ち寄ってサンドイッチと野菜ジュースを購入。ファイターズが合宿している「かねいちや」から1kmほど行き過ぎた場所にある県指定天然記念物「別宮の大カツラ」の駐車場で食べる。ここには高さ27mにも達するカツラの木が密集して生育し、その付近からこんこんと清流が流れている。その水で顔を洗い、口をすすいで見学の臨戦態勢を整える。
しばらく時間を調整し、7時前には「かねいちや」に到着。宿舎のロビーで監督に挨拶した後、すぐに人工芝のグラウンドに向かう。すでにJVメンバーの練習が始まっている。
毎年のことだが、夏合宿の朝は早い。まずはJVのメンバーが約1時間、パートごとの練習に取り組み、それが終わると朝食に向かう。入れ替わって、今度は準備運動を終えたVのメンバーが練習を始める。
驚くのは、その取り組みの密度が年々濃くなっていること。初めてこの合宿を見学にきた十数年前も、さすが夏合宿、密度が濃いと感心したが、いまはそれに強度が上積みされている。以前は意識的に「寸止め」にするプレーが主体だったが、いまはオフェンスとディフェンスのメンバーが対抗心をむき出しにして渡り合う。
しかし、練習密度が濃くなれば、その分、負傷する選手も増える。ホテルのロビーに立てかけられた練習メニュー表の隣には、日々、その日の練習に加わるメンバーが書き込まれるが、その中には「練習不可」とされている選手名が何人も見える。
練習の密度を上げれば、負傷者も増える。しかし、間延びした練習では、実戦で使える動きは身につかない。双方の利害、得失を計算し、選手の疲労度を考慮したうえで、日々の練習メニューを決めていくのがチームの方針であろう。
そんなあれこれを考えている間にも、グラウンドでは練習が続いている。けれども、時間を決めて休憩時間をとり、水分や栄養補給ゼリーを規則的に摂取させる時間は必ず設けている。グラウンドの両側にはチームの持ち込んだテントが何張も立てられ、休憩タイムの選手に日陰を提供する。
合宿地は、冬場はスキー客で賑わう高原にあるが、下界と同様、日が昇れば強い日差しが照りつける。朝、車で走っているときは、高速道路脇の表示に「22.5度」とあったので、これは涼しいぞ、と思っていたが、太陽が照りつける時間になれば、気温はぐんぐん上がる。午前9時ごろには、木陰のない場所ではもう30度近くまで上昇しており、過去十数年の見学時には記憶がないほどの暑さである。
しかし、そこは合理的な思考をするファイターズである。一番暑い時間帯には、グラウンドのチーム練習はすべてストップし、食事と昼寝、そして簡単なミーティングの時間に充てる。練習が再開されるのは午後3時。湿気の少ない高原なので、この時間になると、太陽が照りつけていても、風さえ通れば幾分暑さも緩和される。
まずはJVのメンバーから始まり、より強度の上がるVチームの練習は4時から6時までと決めている。さらに合宿中には合計2日間、全員にグラウンドでの練習を休ませ、体力の回復に充てる日も設けている。
体力を養い、新たなプレーを習得し、チームの士気を上げるための合宿だが、フルに練習プログラムを組むのではなく、途中に休憩時間や休息日を設けて、より安全に、より効率的にと心掛けているのがファイターズである。その発想は上ヶ原でも東鉢伏でも変わらない。
変わりつつあると見えたのは、合宿に参加しているメンバーの気持ちの持ち方である。この日、僕が声を掛けたりその行動に接したりしたメンバーの名前や行動を具体的に挙げて、彼らがこの合宿にかける思いの強さを紹介したいところだが、いまは個々の名前を挙げる場面ではない。いつか別の機会にでも紹介したいと考えている。
ただし、この合宿でチームの何かが変わりつつあるという印象を持ったことだけは伝えておきたい。僕はいま、その変化の行き着く場所に、大きな期待を持っている。
午前4時半過ぎに仁川の自宅を出発。辺りは薄暗いが、その分、行き交う車は少なく、普段は混雑している宝塚西トンネル付近も快調に走れる。赤松峠付近から舞鶴道に入ればさらに車が少なくなり、快適なドライブが続く。高速道路を降りると、コンビニに立ち寄ってサンドイッチと野菜ジュースを購入。ファイターズが合宿している「かねいちや」から1kmほど行き過ぎた場所にある県指定天然記念物「別宮の大カツラ」の駐車場で食べる。ここには高さ27mにも達するカツラの木が密集して生育し、その付近からこんこんと清流が流れている。その水で顔を洗い、口をすすいで見学の臨戦態勢を整える。
しばらく時間を調整し、7時前には「かねいちや」に到着。宿舎のロビーで監督に挨拶した後、すぐに人工芝のグラウンドに向かう。すでにJVメンバーの練習が始まっている。
毎年のことだが、夏合宿の朝は早い。まずはJVのメンバーが約1時間、パートごとの練習に取り組み、それが終わると朝食に向かう。入れ替わって、今度は準備運動を終えたVのメンバーが練習を始める。
驚くのは、その取り組みの密度が年々濃くなっていること。初めてこの合宿を見学にきた十数年前も、さすが夏合宿、密度が濃いと感心したが、いまはそれに強度が上積みされている。以前は意識的に「寸止め」にするプレーが主体だったが、いまはオフェンスとディフェンスのメンバーが対抗心をむき出しにして渡り合う。
しかし、練習密度が濃くなれば、その分、負傷する選手も増える。ホテルのロビーに立てかけられた練習メニュー表の隣には、日々、その日の練習に加わるメンバーが書き込まれるが、その中には「練習不可」とされている選手名が何人も見える。
練習の密度を上げれば、負傷者も増える。しかし、間延びした練習では、実戦で使える動きは身につかない。双方の利害、得失を計算し、選手の疲労度を考慮したうえで、日々の練習メニューを決めていくのがチームの方針であろう。
そんなあれこれを考えている間にも、グラウンドでは練習が続いている。けれども、時間を決めて休憩時間をとり、水分や栄養補給ゼリーを規則的に摂取させる時間は必ず設けている。グラウンドの両側にはチームの持ち込んだテントが何張も立てられ、休憩タイムの選手に日陰を提供する。
合宿地は、冬場はスキー客で賑わう高原にあるが、下界と同様、日が昇れば強い日差しが照りつける。朝、車で走っているときは、高速道路脇の表示に「22.5度」とあったので、これは涼しいぞ、と思っていたが、太陽が照りつける時間になれば、気温はぐんぐん上がる。午前9時ごろには、木陰のない場所ではもう30度近くまで上昇しており、過去十数年の見学時には記憶がないほどの暑さである。
しかし、そこは合理的な思考をするファイターズである。一番暑い時間帯には、グラウンドのチーム練習はすべてストップし、食事と昼寝、そして簡単なミーティングの時間に充てる。練習が再開されるのは午後3時。湿気の少ない高原なので、この時間になると、太陽が照りつけていても、風さえ通れば幾分暑さも緩和される。
まずはJVのメンバーから始まり、より強度の上がるVチームの練習は4時から6時までと決めている。さらに合宿中には合計2日間、全員にグラウンドでの練習を休ませ、体力の回復に充てる日も設けている。
体力を養い、新たなプレーを習得し、チームの士気を上げるための合宿だが、フルに練習プログラムを組むのではなく、途中に休憩時間や休息日を設けて、より安全に、より効率的にと心掛けているのがファイターズである。その発想は上ヶ原でも東鉢伏でも変わらない。
変わりつつあると見えたのは、合宿に参加しているメンバーの気持ちの持ち方である。この日、僕が声を掛けたりその行動に接したりしたメンバーの名前や行動を具体的に挙げて、彼らがこの合宿にかける思いの強さを紹介したいところだが、いまは個々の名前を挙げる場面ではない。いつか別の機会にでも紹介したいと考えている。
ただし、この合宿でチームの何かが変わりつつあるという印象を持ったことだけは伝えておきたい。僕はいま、その変化の行き着く場所に、大きな期待を持っている。
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